UCLの2026-27年度GenAI新規則:Academic Manualで何が変わったのか

昨年度のUCLのAcademic Manual(学術便覧)には、モジュール責任者からの明確な指示がない場合、GenAIの使用によって処罰されることはないと明記されていました。しかし今年度の便覧からはその約束が消え、代わりにモジュール責任者の義務だけが残されて、学術不正手続きの冒頭に移されました。つまり、GenAIをどこまで使ってよいかを学生に伝える責任はモジュール責任者にある、という点です。UCL公式の2026-27年度変更点サマリーには、このどちらも記載されていません。具体的に何が変わり、どう対処すべきかを解説します。

HumanPen チーム

· 7 分

UCLの2026-27年度GenAI規則、何が変わったのか?

変更点は4点、すべて学生の学術不正手続きに関する部分です。2026年9月25日、私たちは2025-26年度版(698ページ)と2026-27年度版(731ページ)の合訂版Academic Manualを最初から最後まで完全に照合しました。

2025-26年度版マニュアル2026-27年度版マニュアル
課題の指示(brief)が不明確な場合のGenAI利用学術不正には当たらない:"where there has not been a clear direction from the module leader will not be penalised"(モジュール責任者からの明確な指示がない場合、処罰されることはない)便覧のどこにもそのような約束はない
モジュール責任者の義務同じ免責条項の中に記載:"each module leader is responsible for informing students"(各モジュール責任者は学生に周知する責任を負う)手続きの冒頭に記載:モジュール責任者は"the scope of permissible use of Generative Artificial Intelligence (GenAI)"(生成AIの許容される利用範囲)に関する情報を提供する責任を負う
GenAIの不正利用の位置づけ「盗用(Plagiarism)」の中に分類。データセットや参考文献の捏造は「改ざん・捏造(Falsification)」に分類独立した区分である"Misuse of GenAI"(GenAIの不正利用)となり、"false data, text, or references"(虚偽のデータ、文章、参考文献)の作成も含まれるようになった
口頭試問(viva)試験委員会委員長は"may, in the first instance, initiate an investigatory viva"(まず調査のための口頭試問を開始することができる)作成者(オーサーシップ)に疑義がある場合、学部は"will organise an Investigatory Viva"(調査のための口頭試問を実施する)こととされ、出席は必須

UCL自身の2026-27年度変更点ページでは、この章についてわずか1行で"Section 9: Student Academic Misconduct Procedures replaced (EdCom May 2026)"(第9節:学生の学術不正手続きを改定、2026年5月教育委員会)と要約されているだけです。GenAIのことや口頭試問、削除された約束、あるいは場所が移された責任については一切触れられていません。

消えた約束と、残された義務

2025-26年度版の便覧には、"will not be considered Academic Misconduct"(学術不正とはみなされない)とする3つの項目が列挙されていました。その3番目が次の規定です。"Use of GenAI tools that does not exceed that permitted in the assessment brief: each module leader is responsible for informing students of the extent to which they are permitted to use GenAI tools in each assessment. Evidence of use where there has not been a clear direction from the module leader will not be penalised."(課題の指示で許可された範囲を超えないGenAIツールの使用:各モジュール責任者は、各課題においてどの程度GenAIツールの使用が許可されているかを学生に周知する責任を負う。モジュール責任者からの明確な指示がない場合、使用の証拠があっても処罰されることはない)

この条項は本来2つの役割を担っていましたが、2026-27年度版マニュアルでは両者の扱いが分かれました。義務の方は残り、手続きの冒頭へと移されました。"module leaders are responsible for providing accurate and up-to-date information to students about their assessments. This includes information about appropriate referencing, clear instructions about collaborative working, the scope of permissible use of Generative Artificial Intelligence (GenAI)"(モジュール責任者は、課題に関する正確かつ最新の情報を学生に提供する責任を負う。これには適切な引用に関する情報、共同作業に関する明確な指示、生成人工知能[GenAI]の許容される利用範囲が含まれる)と定められ、不正行為規定へのリンクも添えられています。一方で、免責の約束は消え去りました。そうした情報が一度も提供されなかった場合にどうなるのかについては、2026-27年度版の便覧には一切書かれていません。

ここを注意深く読んでください。課題の指示が曖昧な場合にGenAIを使うと今後は処罰される、と書かれているわけではありません。マニュアルは「処罰されない」という約束をやめた一方で、利用範囲を伝えることを引き続きモジュール責任者の職務としている、ということです。

「GenAIの不正利用」が対象とする範囲

2026-27年度版マニュアルでは、次のように定義されています。"Unauthorised and/or unacknowledged use of Generative Artificial Intelligence (Misuse of GenAI): defined as the use of assistive tools beyond the remit of the assessment brief, or to create false data, text, or references."(生成人工知能の無許可および/または未申告の利用[GenAIの不正利用]:課題指示の範囲を超えて支援ツールを使用すること、あるいは虚偽のデータ、文章、参考文献を作成することと定義される)

注目すべき点が3点あります。まず、定義では単にチャットボットだけでなく"assistive tools"(支援ツール)と表現されているため、ツールが何と呼ばれていようと、課題指示で何が許可されているかが判断基準になります。また、GenAIを使ってデータセットや参考文献を捏造することは、2025-26年度版でもすでに「改ざん・捏造(Falsification)」の下で不正行為とされていましたが、今回は「GenAIの不正利用」の中に組み込まれ、新たに"text"(文章)が追加されました。そして、この区分名には「無許可(unauthorised)」と「未申告(unacknowledged)」という2つの要素が含まれています。課題指示で認められている使い方であっても、指示どおりに申告しなければ問題になり得ます。

マニュアルが今も認めていること

両エディションで一言一句違わず維持されている免責規定が1つあります。"Language and Writing review"(言語および文章の推敲・レビュー)は学術不正に該当しないとされており、その定義は"defined as having a third-party or software check areas of academic writing such as structure, fluency, presentation, grammar, spelling, punctuation, and language translation."(第三者またはソフトウェアに、構成、流暢さ、体裁、文法、スペル、句読法、言語翻訳といった学術的ライティングの各領域をチェックさせることと定義される)となっています。さらにこう続きます。"However, this may be considered Academic Misconduct if substantive changes to content have been made by the reviewer or software or at their recommendation, which would suggest that the reviewer had either produced or determined the substantive content of the submission, or, in cases of language translation, if the student is being assessed on their ability to translate or use a language other than English."(ただし、レビュー担当者やソフトウェアによって、またはその提案に基づいて内容に実質的な変更が加えられ、レビュー担当者が提出物の実質的な内容を作成または決定したと示唆される場合や、言語翻訳において、学生が英語以外の言語を翻訳または使用する能力を評価されている場合には、学術不正とみなされる可能性がある)

つまり、文法や流暢さのチェックはセーフであり、論文の主張や内容そのものを変えてしまうツールはアウトです。また、課題そのものが翻訳能力や外国語運用能力を測るものである場合、翻訳ツールの使用は免責の対象外となります。

調査のための口頭試問(Investigatory Viva)に呼び出されたら

軽微な事案について、2026-27年度の手続きでは第1段階(Stage 1)において学部に3つの選択肢が与えられています。ペナルティを科すか、作成者(オーサーシップ)に疑義がある場合に調査のための口頭試問(Investigatory Viva)に付すか、審査委員会に送致するかです。GenAIの不正利用に関する初犯は、軽微な事案の例として挙げられています。口頭試問が行われる場合、その目的"is to establish the student’s authorship of the submitted work and make a decision on the case when it is Minor."(提出された課題の作成者が学生本人であることを確認し、軽微な事案である場合に判断を下すことにある)とされています。手続きの流れは具体的に定められています。

  • 招集通知、不正行為報告書、証拠資料は、"at least five working days before the scheduled Investigatory Viva"(予定された調査口頭試問の少なくとも5営業日前)までに届かなければなりません。
  • "A student’s attendance at an Investigatory Viva is mandatory and cannot be conducted in their absence."(調査口頭試問への学生の出席は必須であり、学生の不在時に実施することはできない)と規定されています。出席しなかった学生は学部の義務的面談(Mandatory Faculty Interview)に付され、新たな期日が指定される場合があります。さらに"Continued non-engagement with the Viva process may result in Suspension or Termination of Studies via the Mandatory Faculty Interview process."(口頭試問プロセスに引き続き応じない場合、学部義務面談の手続きを通じて停学または退学処分となる可能性がある)とされています。
  • 口頭試問は、"should be organised within 20 working days from the date of the Stage 1 outcome, unless there are reasonable circumstances that prevent this."(これを妨げる合理的な事情がない限り、第1段階の結果通知日から20営業日以内に設定されるべきである)とされています。

手続きのより早い段階でも、新たな期限が設けられています。不正の申し立てに対して"within 10 working days from the date of notification of the allegation, the Department/Faculty will make a decision on how to proceed in absence of a response."(申し立ての通知日から10営業日以内に回答しない、あるいは面談に応じない場合、学部は回答がないものとして以後の手続きを決定する)とされています。自分の論文について説明を求められたらは、こうした面談に備えるためのチェックリストです。

次の課題を提出する前にやるべきこと

  1. 課題ごとにGenAIの利用規定を確認する。2026-27年度版の定義は、"the remit of the assessment brief"(課題の指示の範囲)に依拠しています。
  2. 規定が見当たらない場合は、モジュール責任者に問い合わせて回答を保存しておく。2026-27年度の手続き上、学生に説明することは責任者の義務です。その回答メールはあなたの身を守る記録になります。
  3. 課題の指示に従って、利用した内容を申告する。違反区分名の半分は「未申告」という言葉で占められています。
  4. 下書きや執筆メモを保存しておく。変更履歴も助けにはなりますが、それはキーストロークごとの記録ではなく、保存された状態のスナップショットにすぎません。Googleドキュメントの変更履歴は何を記録しているのかで、記録される情報とされない情報について解説しています。
  5. 申し立てを受けたら10営業日以内に回答する。期限を過ぎると、学部は学生の意見を聞かずに判断を下す可能性があります。
  6. 参考文献やデータをツールに生成させない。定義のこの項目は、課題の指示で何が許可されていようと無条件に適用されます。

これらの規則におけるHumanPenの位置づけ

2026-27年度版の定義に照らすと、HumanPenは支援ツール(assistive tool)に分類されます。これは英語の文章をリライトするツールです。UCLの課題においては、その課題の指示(brief)で認められている範囲内でのみ利用可能であり、利用した場合は指示に従って適切に申告する必要があります。

HumanPenが制御するのは、どの箇所を書き換えるかという点です。書き換えられるのは、TurnitinやiThenticateのレポートで指摘され、実行前にユーザー自身が確認した箇所に限られます。検出ツールや審査委員会がその結果をどのように判断するかについて、当ツールは何ら保証や主張を行うものではありません。

よくある質問

今年度より前にUCLに入学した場合でも、2026-27年度の手続きは適用されますか? 第9節には"These procedures apply to all current and former students of UCL"(本手続きはUCLのすべての在学生および旧学生に適用される)と明記されており、ページには"Published for 2026-27"(2026-27年度向けに公開)と記載されています。もし不正の申し立てが2025-26年度に提出した課題に関するものである場合は、どちらのエディションに基づいて処理されるのかを所属学部に確認してください。

Grammarlyの使用は認められていますか? スペル、文法、流暢さのチェックは、ツールが内容に実質的な変更を加えない限り、"Language and Writing review"(言語および文章の推敲・レビュー)の免責対象に含まれます。ただし、文章の意味や主張を変えてしまうリライト機能は扱いが異なり、課題の指示に委ねられます。

UCLはAI検出スコアを証拠として採用しますか? 2026-27年度版マニュアルにはその記載はありません。Turnitinへの言及は、審査委員会に送付される書類リストの中に1回登場するだけです("the student’s submission, Turnitin Reports, etc"(学生の提出物、Turnitinレポートなど))。また、AI検出スコアがどの程度の証拠能力を持つかを定めた条項も存在しません。マニュアル全体で"detect"から始まる単語は4回登場しますが、いずれも学部入試におけるUCAS類似性検出サービスに関するものです。

モジュール責任者からGenAIについて何の説明もありませんでした。どうすればいいですか? 2025-26年度版マニュアルでは、明確な指示がない場合の利用は処罰されないとされていました。2026-27年度版ではどうなるのか明記されていませんが、学生に周知することはモジュール責任者の義務と定められています。提出前に質問し、受け取った回答メールを必ず保存してください。

参考資料

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