AI不正疑惑で大学が使う証拠とは? 1,162件の調査ファイルから見えた実態

提出した課題についてAI使用の疑いをかけられ、次の連絡を待っている段階で知っておくべき最も実質的な問いは、「最終判断を下す担当者の前に、実際にどのような証拠が提示されるのか」ということです。2026年9月に発表された研究では、オーストラリアのある大学における3年分の調査ファイルを精査し、証拠の内容を集計しました。ファイルに何が含まれていたのか、研究者がそれぞれの証拠にどれほどの重みを認めたのか、そして学生側は何を準備しておくべきかを解説します。

HumanPen チーム

· 12 分

AI不正の申し立てで、実際に提出される証拠とは?

オーストラリアのある大学において、AI検出ツールのスコアが占める割合はごく一部であり、年々減少していました。2023年から2025年にかけて記録されたAI関連の不正疑惑1,162件において、GPTZeroなどのAI検出ツールの出力結果が証拠項目に占める割合は、2023年が5.8%、2024年が8.8%、2025年は0.5%にとどまりました。これは、同種の事案が618件あった2025年において、わずか5項目にすぎません。3年間を通じて見ても、検出ツールの出力が証拠として現れたのは1,162件中67件でした。はるかに多く見られたのは、学生への面談における自認(34.3%の事案)、実在が確認できない参考文献(30.6%)、採点者が「AI特有の文体である」と判断した記述(20.6%)でした。なお、証拠の種類や強さが事案の最終的な結末に与える影響は、限定的なものにとどまっています。

本研究は、ウーロンゴン大学のAlbert Munoz、Mercedez Hinchcliff、Cameron Langfield、Ann Rogersonによる論文"How strong is the evidence in generative AI-related academic misconduct allegations? A mixed-methods analysis"(生成AI関連の学術的不正疑惑における証拠の強さはどの程度か? 混合研究法による分析)です。2026年9月2日付で学術誌『International Journal for Educational Integrity』にオープンアクセスとして掲載されました。分析された調査ファイルは著者らが所属する同大学のものであり、Rogersonが同誌の編集委員を務めている旨が利益相反として論文内に明記されています。

研究チームが調査した対象

同大学では2023年1月から2025年12月までの間に、計5,127件の学術的不正事案が記録されました。研究チームはその中から、生成AIの使用が疑われた1,162件(全体の22.7%)を抽出しました。その割合は年々増加しています。

202320242025
AI関連の事案数214330618
その年の不正事案全体に占める割合11.9%20.0%36.9%

この調査対象に含まれているからといって、その学生が不正を行ったと認定されたわけではありません。論文内でも率直に述べられています。"This study does not adjudicate whether individual students engaged in the misuse of generative artificial intelligence."(本研究は、個々の学生が生成人工知能の不正使用を行ったかどうかを裁定するものではない)

ファイル内から抽出された1,855件の個別の証拠は、15の種類に分類されました。各証拠は法学研究に基づく3つの尺度(関連性、信ぴょう性、推論力=その証拠単体で申し立てをどれだけ強く裏付けられるか)によって評価されました。これらの評価は研究者側の判断基準に基づくものであり、自身の人手によるコーディングで調整したローカル言語モデルを用いて全データに適用されたものです。個々の証拠が客観的に正しかったかどうかを検証したものではありません。

調査ファイルに含まれていた証拠の内訳

以下は全15種類の証拠を、出現した事案数の多い順に並べたものです。1つの事案に複数の種類の証拠が含まれることがあるため、合計は100%を超えます。

証拠の種類事案数(全1,162件中)研究者による推論力の評価
面談での自認399 (34.3%)項目の97.2%が「強」
引用された参考文献の実在が確認できない356 (30.6%)98.0%が「中」
採点者がAI特有の文体だと判断した記述239 (20.6%)「弱」70.6%、「中」29.4%
実在する文献が、実際には書かれていない主張の根拠として引用されている196 (16.9%)「弱」53.6%、「中」27.1%、「強」19.3%
Turnitinなどの類似度レポート71 (6.1%)100%が「弱」
AI検出ツールの出力結果(例として挙げられているもの:GPTZero、ZeroGPT)67 (5.8%)「弱」92.5%、「中」7.5%
学生本人の能力水準や過去の提出物とかけ離れた文章65 (5.6%)「中」51.4%、「弱」48.6%
面談で学生本人が課題内容を説明できなかった63 (5.4%)100%が「中」
具体的な証拠の記載がない申し立て58 (5.0%)評価対象外
オンライン試験中に記録された禁止行為51 (4.4%)「強」68.4%、「中」29.8%
複数の学生からほぼ同一の内容が提出された51 (4.4%)「弱」50.9%、「中」41.8%、「強」7.3%
試験の監視記録(ログ、画面キャプチャ)37 (3.2%)「強」86.1%
ファイルのメタデータまたはシステムのタイムスタンプ26 (2.2%)「中」67.9%、「弱」32.1%
書面による自認10 (0.9%)100%が「強」
名指しされた第三者による文献捏造の裏付け確認1 (0.1%)「中」

実在が確認できない参考文献は最も急増した証拠であり、記録された証拠項目に占める割合は2023年の10.4%から2025年には30.0%へと跳ね上がりました。

検出ツールのスコア:当初から稀で、やがてほぼ皆無に

その年の証拠項目に占める割合202320242025
AI検出ツールの出力結果5.8%8.8%0.5%(5項目)
Turnitinなどの類似度レポート4.0%5.5%3.1%

これらの割合の分母は事案数ではなく「証拠項目数」であり、論文に具体的な件数が明記されているのは2025年のみです。参考情報として(表の分母ではありませんが)、各年のAI関連事案数はそれぞれ214件、330件、618件でした。3年間全体で見ると、AI検出ツールが証拠となったのは1,162件中67件、計69項目でした。

ここから「検出ツールの結果は証拠にならない」と早合点する前に、確認しておくべき点が2つあります。

評価は実際に測定されたものではなく、事前に設定されたルールによるものです。すべてのAI検出項目は信ぴょう性が「低」と評価されましたが、これは研究者が当初から定めていた前提でした。論文には、これらの出力が"were treated in the present analysis as low-credibility evidence"(本分析においては低信ぴょう性の証拠として扱われた)と記されており、その評価基準自体が"documented limitations such as AI detector false positive rates"(AI検出器の偽陽性率など、文書化されている限界)を考慮して設計されていました。本研究では、個々の検出スコアが実際に誤りであったかどうかは検証されていません。ごくわずかな誤検知率が大学全体でどれほどの規模に膨らむかについては、大学全体で75,000本の論文が提出される場合、1%の誤判定率は何を意味するのかで試算しています。

検出スコアの減少は、学内の規定改定とも一致しています。同大学の評価方針では、2025年以降、教職員が学生の提出物を外部の検出器にアップロードすることを禁止しました。現行の規定では、教職員は"are not permitted to upload student work to third party tools, including generative artificial intelligence (GenAI) or misconduct detection software"(生成人工知能(GenAI)や不正検出ソフトウェアを含むサードパーティ製ツールに、学生の課題をアップロードすることは認められない)と定められています。ただし同条項では、大学がサポートする"approved detection software"(承認された検出ソフトウェア)の利用は引き続き許可されており、2025年においても類似度レポートは証拠項目の3.1%を占めていました。大学の現行の不正調査手続きでも、テキスト照合ツール(Turnitin)や"language analysis software (e.g. Turnitin Authorship)"(言語分析ソフトウェア、例:Turnitin Authorship)など、大学が利用可能なソフトウェアが列挙されています。論文の著者らは、検出ツールの出力結果が「証拠の優越(balance of probabilities)」の基準を満たし得ないことを教職員が認識するようになったことが、この減少の背景にあると分析しています。各大学には独自の規定があり、その一部はAI検出器の使用や証拠能力を制限する19の大学にまとめられています。

論文で明確にされていない点として、TurnitinのAI作文スコアがどの分類に記録されたのかという問題があります。「類似度レポート」の区分はテキスト照合の証拠として定義されており、その例として挙げられているのは、その種の課題としては"a similarity score of 1%, which is unusually low"(異常に低い1%の類似度スコア)を示すレポートです。一方で、「AI検出」の区分で具体名が挙げられているのはGPTZeroとZeroGPTでした。

最も多い証拠:「AIのような文章である」という判断

文章そのものから抽出された証拠の中で最も頻出だったのは、採点者が「AIのような文体である」と感じたケースで、239件に上りました。論文では、教職員による指摘の具体例として次のような表現が挙げられています。"generic transitional phrases, unnaturally uniform paragraph structure, and unsolicited definitions of basic terms not required by the task."(紋切り型の接続表現、不自然に均一な段落構造、課題で求められていない基本的な用語の勝手な定義)

研究チームはこれらの証拠項目の大半を「弱」と判定しました。そうした特徴は"not exclusive to GenAI misuse."(生成AIの不正使用に特有のものではない)ためです。証拠全体に占めるこの種の指摘の割合は、2023年の19.5%から2025年には14.5%へと推移しました。

件数としては少ないものの、学生が普段提出する文章水準との比較(65件)も存在し、その評価は「中」と「弱」にほぼ二分されました。論文の背景部分では、その問題点について言及されています。学生の文章力は時間とともに変化するため、"which can make legitimate improvement difficult to distinguish from anomalies attributable to misuse."(正当な文章力の向上と、不正使用に起因する異変との区別を困難にする可能性がある)ということです。もしこのような指摘を受けている場合は、過去の課題を文体基準として比較する場合で、過去の提出物との比較が有効なケースと反論可能な点について詳しく解説しています。

事案の多くは面談の中で形成される

他のどの証拠よりも多くの事案で見られたのは、面談中になされた自認(399件)であり、ほぼ例外なく「強」と評価されました。面談に関するもう1つの類型である「学生自身が自分の提出物を説明できない」(63件)は、一貫して「中」と評価されました。これは、"consistent with GenAI use but equally consistent with alternative explanations such as poor comprehension or test anxiety"(生成AIの使用とも整合するが、理解不足や試験への不安といった別の説明とも同様に整合する)ためです。

著者ら自身も次のように結論づけています。"in a substantial proportion of cases, the strongest evidence available emerged only after the institution had already determined the allegation was sufficient to proceed."(かなりの割合の事案において、得られた最も強力な証拠は、大学側が申し立てを進めるに足るとすでに判断した後に初めて浮上したものであった)

また、手続きの進行も迅速です。申し立てから最終決定までの期間の中央値は12日でした(事案の半数は6〜20日の間に収まっています)。同大学の現行の不正調査手続きでは面談の機会が設けられており、面談の前に科目担当者は"the summary of the allegation and evidence that has been collected"(申し立ての概要および収集された証拠)をメールで学生に送付することが義務付けられています。同席者(サポートパーソン)を伴うことも可能ですが、代理人として発言することはできません。大学の学生向けガイダンスでも、"you may be asked to explain how you developed an assessment item"(課題をどのように作成したかの説明を求められる場合がある)と注意を促しています。

これらは決して「余計なことは話すな」という助言ではありません。もし課題で許可されていない方法で実際にAIを使用してしまった場合、AI判定の誤認:不服申し立ての手順と大学が認める証拠にその場合の対処法を解説したセクションがあり、事実を率直に認める立場を推奨しています。不正を行っていないのであれば、面談こそがその課題を自力でどのように執筆したかを証明する場となります。

証拠が強力であれば、結果は決まっていたのか?

今回のデータを見る限り、明確な関連は見られませんでした。研究チームは、証拠の種類、数、および評価スコアが、事案がどの段階まで進み、どのような結末に至ったかと連動しているかを検証しました。一定の相関は見られたものの、"the explanatory power of evidence characteristics across all model specifications is modest"(すべてのモデル仕様において、証拠の特性が持つ説明力は限定的である)という結果でした。

研究者らは、その理由を手続きの性質そのものにあると説明しています。事案が次の段階へ進むかどうかは、客観的な証拠評価ではなく教職員個人の判断に従います。最終的に不正と認定されるか、あるいは懲戒処分ではなく教育的指導にとどまる「不適切な学術慣行(poor academic practice)」で済むかは、初犯であるかどうかといった要因に左右されがちです。また委員会段階での却下は、学生側の弁明、手続き上の不備、あるいは学生への配慮などが理由となり得ますが、調査ファイルには聴聞会でどのような議論が交わされたかまでは記録されていません。著者らの言葉を借りれば、調査プロセスの"no minimum evidentiary threshold at any stage of the pipeline"(手続きのどの段階においても、証拠に関する最低基準が存在しない)状態なのです。

この点は数値にも表れています。58件(5.0%)の事案では、申し立てそのもの以外に具体的な証拠が一切記載されていませんでした。ただし、そうした証拠のない申し立ては年々減少しており、証拠項目に占める割合は2023年の7.6%から2025年には約2.5%へと低下しています。

本研究の限界と適用範囲

  • 1つの大学、3年間のデータ。 ウーロンゴン大学における2023年から2025年のデータに基づいています。著者ら自身も、この傾向が他の教育機関にそのまま当てはまるとは限らないと述べています。
  • 聴聞会そのものではなく、書類記録であること。 "The evidence records capture what was documented in the case file, not what was argued, tested, or weighed during the hearing."(証拠記録は調査ファイルに記載された内容を捉えたものであり、聴聞会の中で何が主張され、検証され、比較衡量されたかを示すものではない)
  • 学生属性の内訳がないこと。 学部生か大学院生か、国内学生か留学生か、あるいは所属専攻といったデータは含まれていないため、どのような学生が申し立てを受けやすいのかまでは明らかにできません。
  • 評価基準は独自の枠組みであること。 証拠の評価は著者ら独自の基準によるものであり、12件の事案で調整された言語モデルによって全データに適用されました。その後、未見の54件で検証が行われ、2名の人手による評価者との一致度は、人間同士の一致度と統計的に有意な差がないことが確認されています。
  • 学内関係者による調査であること。 著者らは分析対象となった大学の教職員であり、自身でもこれが"introduces potential bias, especially during the calibration exercise."(特に基準調整の作業において、潜在的なバイアスをもたらす可能性がある)と記しています。
  • 調査期間の途中で規定が変更されたこと。 2025年にサードパーティ製検出器への課題アップロードが禁止された規定改定は、調査対象期間の途中に起きた出来事です。

AI使用を指摘されたり、面談に呼び出された場合の対処法

  1. 提示されている証拠を1つずつ確認する。 検出スコアなのか、AI特有の文体だと見なされた箇所なのか、過去の提出物との比較なのか、参考文献の不備なのか、具体的な証拠項目を箇条書きで開示してもらいましょう。本研究の事案でも5.0%は申し立て以外の証拠が一切ありませんでした。大学の調査手順には、面談前に学生が開示を受けられる証拠の範囲が定められているはずです。面談に向けた詳しい準備については、AI疑惑を受けた後の学術的誠実性に関する面談を参照してください。
  2. 記録に検出ツールのスコアが含まれている場合は、どのツールが使われたかを確認する。 そして、所属大学が教職員によるそのツールの使用を認めているかどうかを確かめてください。
  3. 文章の文体や特徴について指摘されている場合は、執筆過程の記録を持参する。 草稿、メモ、ファイルのバージョン履歴などが該当します。Word、Google Docs、Overleafでバージョン履歴を残す方法で、それぞれのツールでの履歴の確認場所を解説しています。
  4. 提出した課題の内容を自分の言葉で説明できるように準備しておく。 なぜそのような論理構成にしたのか、主な参考文献には実際に何が書かれているのか、草稿の間で何を変更したのかを整理しておきましょう。本研究でも63件の事案において、「本人が説明できなかったこと」自体が証拠として記録されていました。
  5. 最初の段階で手持ちの証拠をすべて提出する。 この大学では、調査結果に対する不服申し立てが認められるのは、適正手続きの欠如か、あるいは"new and substantial evidence that has not previously been considered."(これまでに考慮されていない、新しく実質的な証拠)が存在する場合に限られています。自身の大学の規定でも同様の条項を確認してください。

HumanPenが役立つ場面

すでに開始された調査手続きに対して、ここで役立つ手段はありません。調査はすでに提出されたバージョンを対象としており、事後的に文章を書き換えてもファイル内の記録が変わることはないためです。本セクションが想定しているのは、それよりも前の段階です。つまり、まだ草稿を推敲中であり、手元にTurnitinまたはiThenticateのレポートがあり、シラバスや課題要項で特定のツールに限らず外部AIツールによる文章の言い換えが認められていること、およびその利用をどのように申告すべきかを確認済みである段階です。例えばウーロンゴン大学の学生向けガイダンスでは、学生に対し"use only the permitted gen AI technology"(許可された生成AI技術のみを使用すること)を求めており、課題の指示を超えた利用は不正使用と見なされます。これらすべての条件を満たしている場合こそ、HumanPenというツールが役立ちます。Turnitin または iThenticate のレポートを読み込み、指摘された箇所だけを書き換えます。同じ形式の編集可能なファイルを受け取れます。提出する前に、修正結果をご自身の草稿と照らし合わせて確認してください。提出するすべての文章について、自分自身で説明できる必要があるからです。

よくある質問

大学は現在でもAI検出器のスコアを証拠として使っていますか? 本研究の大学では、サードパーティ製検出器へのアップロードを禁止する方針が導入されたこともあり、2025年時点ではごく稀(その年に記録された証拠項目の0.5%にあたる5項目)でした。ただし、各大学が独自の方針を定めているため、これがお手元の大学の対応をそのまま示すものではありません。

「AIのような文体である」という判断だけで十分な証拠になりますか? 研究チームは、該当する特徴がAIの使用に特有のものではないため、そうした証拠項目の大半を「弱」と判定しました。ただし、これは研究上の分析枠組みであり、大学の正式な規則ではありません。この大学では、事案に含まれるすべての証拠を総合し、「証拠の優越(balance of probabilities)」に基づいて判断が下されます。論文ではその意味について、不正が行われた可能性のほうが高い状態であり、かつ"with the burden of proof resting with the institution and the academic raising the allegation rather than the student"(立証責任は学生ではなく、大学および申し立てを行った教員側にある)ことであると説明されています。

本研究において、最も強力とされた証拠は何ですか? 書面または面談における自認、試験監視ソフトウェアのログ記録、およびそれらの記録が示す禁止行為です。これらは、該当する項目の大部分において「強」と評価されました。

この研究は、申し立てを受けた学生が実際にAIを使用したかどうかを示していますか? いいえ。本研究はファイルに記載されていた証拠を集計・評価したにすぎません。1,162件の事案に含まれていることは、AIの不正使用が「疑われた」ことを意味するだけであり、不正が「確定した」ことを意味するものではありません。

参考文献・出典

続きを読む